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2023年7月号
 2023年7月号の音声読み上げができます。
 今回も新海誠監督の防災三部作品のひとつ『君の名は。』から防災の学びを探します。
作品のコンセプトのひとつを主人公・瀧君が強い言葉を使って表現しています。
『あいつに、あいつに逢うために来た!助けるために来た!生きていて欲しかった!誰だ誰だ誰だ誰だ?大事な人、忘れちゃだめな人、忘れたくなかった人!誰だ誰だ誰だ!君の名前は?』。
忘れてはいけない大切なことを再確認できたシーンです。
この出来事はラストシーンで心から溢れる言葉に繋がります。
「君の名前は?」
ここから二人の新たな人生が歩み始めます。
大きな道標の出現です。
特にこのシーンは『声掛けの大切さ』を物語る瞬間で、声を掛けなければ二度と戻らない時間であり
「あの時!」と後悔しても戻らないのです。
しかし、ひと言の言葉から自分の大切な人と共に歩み始める号砲が強く高らかに鳴り響く瞬間でもあるのです。
このことから何事も第一歩目には『あいさつ・声掛け』が大切であると強く感じとることができるシーンでもあります。
 さて、防災の定義は自分の大切な人を守ることです。
その定義を表すために必要な言葉のひとつに『その人の名前』があります。
名前に続いて、顔・姿・考え方等、その人そのものを忘れてはいけないし、忘れたくないものです。
では、忘れないためにどうすれば良いかといえば、共に生きる、共に生き抜く努力をすることです。
危険(災害)が降り掛かる前から、自分の知らない、どこかの誰かが助けてくれると、見ず知らずの他人を当てにすることから抜け出すことが防災活動では重要です。
なので、防災活動で間違えてはならないのが、災害の為に防災をやるのではなく、自分自身が守りたいものの為にやることです。
それは廻りめぐって自分の為にもなるのです。
このスタートラインを引き間違えてはいけません。
 作中では、トテモ辛い経験をする場面があります。
被害者名簿に大切な人の名前。
この経験値はやるせない想いであり、誰もが絶対に見たくないものです。
あくまでも、これは想定訓練(シミュレーション)の中だと表現しておきますが、この想定訓練により、自分がやらなければという強い想いと固い決意が、自分自身や周囲の人の心を動かすことで、自分も他者も救うことにも繋がります。だからこそ『防災訓練』の参加は重要なことなのです。
 過去の災害を鑑みた想定訓練(防災訓練)ならば、多くのケガ人と命を失う人もありうるということも想定が必要!
「みんな助かって良かったね」なんて、のんびりした呑気な想定訓練は、実際の本番でエラーを起こすことになりかねないのです。
訓練だからこそ、多くの失敗という経験値を加算することが重要であり、災害が発生するまでの大切な準備訓練になるのです。
想定訓練は最大限までの被害想定にせよ。
『大きく構えて、小さく収める』それこそが危機管理・危機対応の鉄則です。
その逆に最初に『小さく構え、後で大きくする』という行動は、他者の不安を煽ることになるだけではなく、助かる命も助けることができないことになります。
その為にも準備訓練「学び」が重要です。
 ここで2つの想定訓練を体験してみましょう。
【第1問】
 3日後、加古川市に隕石が落下するかもしれないとの情報が入る。
テレビではチャンネルにより専門家が様々な解説している。
「隕石は落下する」
「隕石は落下しない」
両方の意見を述べているようだ。
政府や気象庁の公式な発表では「落下の確立は10%程度」と公表された。
さて、あなたは加古川市から離れますか? 【第2問】  今から仕事に出かけるところです。
持ち帰っていた仕事の荷物で両手が一杯、出勤がとても大変です。
ふとテレビに目をやると天気予報が目に入ります。
気象予報士さんが「本日の降水確率40%です」と伝えています。
さて、あなたは傘を持っていきますか?
 極端なふたつの例を体験して頂きました。
天気予報の降水確率は、日常的な経験の中での判断。
隕石落下は数万年に一度あるかないかの未経験です。
市民の防災活動では、線引きが必要だということです。
備えが必要なことと、そこまで考えなくてもということ。
それらの線引きは、他者が決めることではなく、あなた自身が責任を持って線引きをすることが重要です。
なので「あなたが責任と覚悟を学ぶこと」これも防災活動には重要なことなのです。
さて、あなたはどのような答を出しましたか?
その答は、時が経て変化しても構わないし、変わることを恐れてはいけません。
その時、その瞬間にしか、答は存在しないのです。
 『君の名は。』から学んだことは『何事も自分事と考えることが大切』ということです。
「そんなバカなことあるものか」と一蹴し他人事と思う方が多いようですが、事実経験した人にとっては命に関わる事でも伝えることの難しさを学んだ作品でした。
次回は新海誠監督作品『天気の子』から防災を学ぶ。

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